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『赤燐(赤りん)系難燃性剤』への対応について

『赤燐(赤りん)系難燃性剤』への対応について

 
電気・電子機器において、回路の短絡、劣化による「発火のリスク」は完全に排除する事はできません。万が一の火災による、人的・経済的損失を防止するため、電気・電子機器の筐体等に使用されるプラスチック、ゴム、木材、繊維等の高分子有機材料には難燃性剤が含有されています。
 
 

 
 
これまで難燃性剤として使用されてきた、臭素系物質(PBB/PBDE等)が、RoHS指令やREACH規則にて使用制限されるようになり(もしくは使用報告が求められる)、その代替材料として赤燐(赤りん)が使用されるケースが増えてきているようです。しかし、近年、赤燐(赤りん)を原因とした故障・事故事例報告が複数あり難燃製剤として、赤燐(赤りん)を使用することのリスクが指摘されるようになりました。
 
赤燐(赤りん)の毒性は非常に低く、実務上無害な物質ですが、空気中の水分と接触すると酸化し、りん酸を生成します。生成されたりん酸により内部の回路がマイグレーション (*1)を起こしショート・焼損の不具合を発生させる事例があります。
 
 

 
 
独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE) が発表した、『プラスチックの難燃化手法と難燃剤によるトラブル事例について』という報告書では、ACアダプターの二次側にあるDCプラグ部分が、発熱して変形する事例が紹介されています。
 
>>詳細はこちら
 
 
赤燐(赤りん)系難燃性剤を使用したコネクタ、DCプラグ等において、絶縁不良、発熱、発煙等の製品事故の発生リスクの高まりを背景に、赤燐(赤りん) の含有を制限する等、製品事故防止活動の強化に取り組まれるお客様が非常に増えております。
 
弊社では、お客様に安心して製品をご使用頂くため、赤燐(赤りん)含有に対して様々な取り組みを実施しています。その一部を以下の通りご紹介させて頂きます。
 
 

■弊社製品における赤燐(赤りん)の含有状況について

 
以下、弊社で取り扱ういずれの製品におきまして、「使用部材に赤燐含有がないこと。または、含まれる場合は絶縁劣化の恐れが無いこと」を基本方針としています。
 
海外製造品においては、仕入先及び協力会社に対して、「赤燐(赤りん)系難燃性材料の不使用」を書面にて要請し、対応状況について定期的に確認を実施しています。また、お客様からの赤燐(赤りん)含有調査に対して、不使用保証書を提出させて頂くなど、含有物質調査に積極的に協力させて頂いております。
 
 
・スイッチング電源
・ACアダプター
・DC/DCコンバーター
・DC/ACインバーター
・インレット/コネクター/電源コード等の樹脂製品
・ノイズフィルター
 
 
一部電源製品において、トランスボビン等の樹脂材料に赤燐(赤りん)系難燃性材料を使用した事例も確認しておりますがトランスボビン材が樹脂コーティングで封止され、「その封止効果がリン酸に対して有効」という事をリン酸溶出試験により確認しております。
 
 

■「サイレントチェンジ」に対する取り組み

 
赤燐(赤りん)系難燃剤に関連して、「サイレントチェンジ」という言葉が注目されています。
 
サイレントチェンジとは、製品の製造段階において、コスト削減等を理由に、発注者の”知らない間に” 材料や配合などの仕様を、サプライヤーが勝手に変更してしまう事をいいます。
サイレントチェンジが原因でクレームや事故、規制基準違反等の様々な問題を起こすため注意が必要です。
 
経済産業省のHPでは、サイレントチェンジにより 赤燐(赤りん)を含有した、アダプターの事故報告が掲載されておりサプライチェーンの中でのサイレントチェンジに対して注意喚起を行っています。
 
 

経済産業省HPより:https://www.meti.go.jp/product_safety/producer/point/silent_change.html

 
 
弊社では、このようなトラブルを防止する為、以下の取り組みを実施しております。
 
①サプライヤーに対してサイレントチェンジの危険性について説明し、”材料・素材変更” については事前に報告するよう取り決めをしています。
また、納入された製品の写真を保存し、ロットごとの外観検査を実施するなど、仕様変更がないかチェックを実施しています。
 
 
②サイレントチェンジが起きないよう、サプライヤーとのコミュニケーションを大切に丁寧に行い、信頼関係を築く努力を継続しています。
また、サプライチェーンの中で、サイレントチェンジが起きる可能性を考慮し、サプライヤーに対し定期的な注意喚起を行っています。
 
また、今後も世界各国の化学物質管理に関する政策・規制の最新動向を収集・評価し弊社の品質管理に反映させて参りたいと思います。
 
 

 

この記事を書いた人

高田 悠以(たかだ ひろい)
株式会社エスエムアイ 代表取締役
愛知県生まれ。名古屋外国語大学卒業後、シアトル留学を経て株式会社エスエムアイに入社。
医療用絶縁トランス、スイッチング電源、ACアダプター、DC-DCコンバーター等 電源製品の開発営業として勤務。日本のモノづくりを愛し、「お客様のお客様を満足させる事が真の顧客満足」をモットーに営業活動に従事。2018年に株式会社エスエムアイの代表取締役に就任。

 
 

本コラムに掲載している情報は、株式会社エスエムアイの調査/収集した情報を共有する事を目的としております。掲載にあたり内容に間違いがないかできる限り注意を払いましたが、内容についていかなる表明・保証を行うものではありません。実際に機器設計や電源選定を行う際は、当資料の情報に全面的に依拠せず、最新の法令・規格・技術情報をご確認下さいますようお願い申し上げます。

 

(*1)マイグレーションとは
電界の影響で金属成分(配線、電極など)が、非金属成分(絶縁物など)を横切って移動する現象。マイグレーションが起きると、電極間の絶縁抵抗の劣化(抵抗値の低下)を起こすため、電極間の短絡(ショート)が発生し、電子機器の故障原因となります。

●参考文献●
1)OKIエンジニアリングHP 化学分析(RoHS・REACH・環境))
2)NITE 製品安全課:「プラスチックの難燃化手法と 難燃剤によるトラブル事例について」
3)NITE 製品安全課:「新しい製品安全課題“サイレントチェンジ”の現状」(https://www.meti.go.jp/product_safety/producer/point/pdf/silent_change.pdf)

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