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有機フッ素化合物(PFAS)とは?自動車業界の知識と最新動向をご紹介

有機フッ素化合物(PFAS)とは?自動車業界の知識と最新動向をご紹介

 
このコラムでわかること
 

  • 電気自動車(EV)のHVACシステムの概要
  • 欧州における新規規制とその影響
  • 代替冷媒の特性と利点
  • CO2センサーの役割
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    (この記事は 約5分 位で読めます。)
     
     

     
     

    EVのHVACシステムの重要性と欧州規制案による変化

    脱炭素社会を目指して、電気自動車(EV)の普及が加速しています。この流れの中で、車載空調(HVAC)システムの技術も向上しており、車の性能と利便性を支える重要な役割を担っています。現在、HVACシステムは車内の空調を整えるだけでなく、バッテリーやインバータ、モーターなどの熱管理を助ける冷却機能も果たしています。これにより、バッテリーやモーターを適切な温度に保つことが可能となり、車両の航続距離を延ばし、運転者や乗員の快適性を高めることができます。
     
    世界情勢の進展とともに、フッ素系化合物であるPFAS(パーフルオロアルキル物質)の使用について新たな規制がヨーロッパをはじめとする地域で提案されています。この影響で、冷媒ガスとして広く使用されているR134aやR1234yfも規制の対象となる見込みです。このため、車載HVACシステムには大きな変更が求められることが予想されます。これにより、自動車業界は新しい環境基準に適応するための技術革新が迫られています。
     
    PFAS(パーフルオロアルキル物質)は、長期間にわたって多様な製品に使用されてきた化学物質です。しかし、近年ではその環境への影響や人体への健康被害の潜在的なリスクが問題視されています。特に、冷媒としての利用においては、製造、使用、廃棄の過程でこれらの化学物質が環境に放出される可能性が指摘されています。これに対応して、業界ではより安全な代替品の開発と採用が急がれており、冷却技術における環境負荷の低減を目指す動きが加速しています。
     
     

    (この画像は記事内容の理解を助けるために引用されています。出典:BOSCH 〔https://www.bosch-mobility.com/en/solutions/thermal-management/thermal-management-for-hybrid-systems-and-electric-drives/〕)

     
     
    この変化は、自動車業界だけでなく、鉄道や重機・建機などの他の車両や機械にも影響を及ぼす可能性があると懸念しています。これらの分野でも熱マネジメントが不可欠であり、新たな冷媒の開発やシステムの変更が求められる可能性があります。
     
    仮に、鉄道や重機・建機がPFAS規制の適用を免れた場合でも、これらのアプリケーションは自動車と比べて数量が多くないため、自動車がフッ素系冷媒を使用しなくなると、既存技術の購入量が大幅に減少し、供給者が製品の開発や提供を続けることが難しくなる可能性があります。これにより、既存技術の入手が困難になる恐れがあります。
     
     
    このコラムでは、欧州における有機フッ素化合物(PFAS)の規制に関する基本情報と、自動車業界の最新動向を紹介します。さらに、鉄道や重機、建機といった他のアプリケーションでも同様の課題が発生する可能性を考慮し、情報発信することを目的としています。
     
     

    代替冷媒の模索と技術の変革

    PFASに対する厳格な規制の強化とともに、地球温暖化係数(GWP: Global Warming Potential)が低く、人の健康にも安全な新しい冷媒を使用したHVACシステムの開発への関心が高まっています。
     
    現在、代替冷媒の主な候補としては、R744(二酸化炭素、CO2)、R290(プロパン)、R717(アンモニア)が挙げられています。これらの冷媒は、従来のフルオロカーボン系冷媒に比べてGWPが格段に低いことから、環境に配慮した冷却技術の実現に貢献すると期待されています。自動車業界を含む多くの分野で、これらの新しい冷媒の研究と実用化が進められています。
     
     

  • R744(二酸化炭素、CO2)は、地球温暖化係数(GWP)が非常に低く、毒性や可燃性がないため、HVACシステムに使用する新冷媒として非常に有力な候補です。実際に、欧州の一部高級車にすでに採用されている実績もあり、その利用の拡大が期待されています。
     
    ただし、R744を使用する際の最大の課題は、その運用圧力が非常に高い点です。R744の使用圧力は通常のHFC(ハイドロフルオロカーボン)系冷媒と比べてかなり高く、そのためHVACシステムの耐圧設計が非常に重要となります。これには、より強固な材料の使用や、密封技術の向上など、システム全体の強化が必要とされます。業界ではこの問題に対処するための技術開発が進められており、安全かつ効率的にR744を利用するための研究が続けられています。
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  • R717(アンモニア)は自然界にもともと存在している「自然冷媒」でGWPは低いですが、強い匂いと微燃性、毒性がありこれまで積極的に冷媒としては使用されてきませんでした。しかし、熱伝導率、比熱容量、膨張係数に優れているため、今後R290を冷媒としたHVACシステムの開発は積極的に検討されると考えています。
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  • R290(プロパン)も自然冷媒でGWPは低く、毒性もないためエアコンや給湯器に使用されています。しかし強燃性であるためEVのHVACシステムとして使用する場合、高度な安全設計が必要となると考えます。
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    (この画像は記事内容の理解を助けるために引用されています。出典:BOSCH 〔https://www.bosch-mobility.com/en/solutions/thermal-management/thermal-management-for-hybrid-systems-and-electric-drives/〕)

     
     
    ☆用語説明:地球温暖化係数(GWP:Global Warming Potential) とは、二酸化炭素を基準にして、ほかの温室効果ガスがどれだけ温暖化する能力があるか表した数字のことです。すなわち、単位質量(例えば1kg)の温室効果ガスが大気中に放出されたときに、一定時間内(例えば100年)に地球に与える放射エネルギーの積算値(すなわち温暖化への影響)を、CO2に対する比率として見積もったものです。
     
     

    R744 冷媒HVACシステム向けCO2センサ ( 車室内実装用 )

    欧州の大手自動車メーカーでは、R744を冷媒とするHVACシステムを搭載した車に、安全性の確保と快適性の向上のためにCO2センサーを車室内に設置しています。
     
    例えば、もしHVACシステムで循環する高濃度のCO2が閉鎖された車室内に漏れ出すと、ドライバーが眠気や集中力の低下を感じるなど、非常に危険な状況を引き起こす可能性があります。この問題を解決するために、CO2センサーは異常に高いCO2濃度を検知し、必要に応じて換気システムを動作させることで、車内のCO2レベルを安全な範囲に保ちます。
     
    また、車の運転状況に応じて、CO2センサーは適切なタイミングで活動します。運転中、駐車中、未使用時などの異なる状況でセンサーが活動し、それに応じた換気システムや緊急制御を行うことで、乗員の安全はもちろん、エネルギーの効率的な使用が可能となります。こうした用途に最適化された製品として、TELAiRE社の車載用CO2センサー「T6743」シリーズが挙げられます。このセンサーは、車室内のCO2濃度を正確に監視し、必要に応じて迅速に対応できるように設計されています。
     
     

     
     
    「Telaire T6743 Internal CO2 Sensor」は、自動車のHVACアプリケーション専用に設計された非分散型赤外線(NDIR)CO2センサーです。このセンサーは単一チャンネルの拡散サンプリング方式を採用しており、外部からの空気の流入や排出を必要とせず、センサーが直接周囲の空気をサンプリングします。これにより、CO2濃度を精密に測定することができます。
     
    そのシンプルながら効率的な設計は、高いコストパフォーマンスを持つガス検知ソリューションを提供します。このセンサーは、特に閉鎖空間内でのCO2濃度監視に非常に適しており、安全性と快適性の確保に貢献します。自動車業界では、このような信頼性の高いセンサー技術が乗員の健康を守る上で重要な役割を果たしています。 
     
    特長:

  • ABC Logic™ – ライフタイムキャリブレーション保証:
    センサーのライフタイムキャリブレーションを補償する独自の技術です。この機能により、センサーの長期間の正確な動作が保証されます。
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  • Lin 2.0出力:
    センサーからの信号の形式を指します。この形式は、特定の自動車アプリケーションに適しており、センサーと他のシステムの間のータの交換を容易にします。
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  • 低消費電力:
    バッテリー駆動の自動車アプリケーションに適しています。
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  • コンパクトデザイン:
    センサーがスペースを節約しつつ他のシステムに効率的に統合されることを可能にします。
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  • 多目的インターフェース:
    多目的インターフェースは、センサーを他のシステムに簡単に統合できるようにします。
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  • キャリブレーション:
    工場出荷時に、最大5,000 ppmまでのCO2濃度レベルを正確に測定するように事前にキャリブレーションされています。
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  • 調整可能なファームウェア変数:
    ファームウェア変数、センサー動作をカスタマイズするための調整可能な設定です。
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  • カスタムパッケージオプション:
    センサーの外観や取り付け方法をお客様の要件に合わせてカスタマイズ可能です。
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    この記事を書いた人

    高田 悠以(たかだ ひろい)
    株式会社エスエムアイ 代表取締役
    愛知県生まれ。名古屋外国語大学卒業後、シアトル留学を経て株式会社エスエムアイに入社。
    医療用絶縁トランス、スイッチング電源、ACアダプター、DC-DCコンバーター等 電源製品の開発営業として勤務。日本のモノづくりを愛し、「お客様のお客様を満足させる事が真の顧客満足」をモットーに営業活動に従事。2018年に株式会社エスエムアイの代表取締役に就任。
    本コラムに掲載している情報は、株式会社エスエムアイの調査/収集した情報を共有する事を目的としております。掲載にあたり内容に間違いがないかできる限り注意を払いましたが、内容についていかなる表明・保証を行うものではありません。実際に機器設計や電源選定を行う際は、当資料の情報に全面的に依拠せず、最新の法令・規格・技術情報をご確認下さいますようお願い申し上げます。
    (参考文献)
    >>[独立行政法人 国立病院機構 災害医療センター]

    >>[順天堂大学医学部付属 順天堂医院]
     

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