株式会社エスエムアイ

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サイレントチェンジへの先回り対応

サイレントチェンジへの先回り対応

このコラムでわかること

 

    サイレントチェンジの基本と起きやすい背景
    実際にあった見逃し事例とその原因
    小さな変化に気づくためのチェックポイント
    無理なく続けられる現場での工夫と情報共有の方法

 
 
(この記事は 約5分 位で読めます。)
 
 

サイレントチェンジの基本と起きやすい背景

 

 
 
製造業界において近年、「サイレントチェンジ」と呼ばれる問題が増加しています。これは、供給元が通知なく製品の仕様や材料を変更する現象であり、その変更が事前に把握できないことで予期せぬ品質トラブルを引き起こします。
 
サイレントチェンジの本質的な問題は、「変更があったことに気づかず、不具合の原因をそのまま流出させてしまう」ことにあります。変更そのものは必ずしも悪ではありませんが、変更によって生じる影響を把握できない状態がリスクとなり、製品の信頼性や安全性に影響を及ぼす可能性があります。
 
例えば、同じ型番を再購入したのに部品の色合いや質感が微妙に違っており、それが検査工程での照合ミスにつながるケース。また、外観は同じでも装置へのフィット感に違和感があり、組み付け時に無理な力が加わって破損する、あるいは接触不良を引き起こすなど、実際の使用環境でトラブルに発展する可能性があります。このように、小さな変化でも見逃すことで予期せぬ不具合の原因になり得るのです。
 
過去に弊社でも、通知のない材料変更により、製品の耐久性が想定よりも低下し、品質トラブルが発生したことがありました。この経験を通じて、複数の仕入れルートを持つ弊社だからこそ得られる「多面的な視点」の重要性を強く認識しました。
 

多様な現場とつながる立場だからこそ見えること

弊社は、各分野に強みを持つ多くの協力工場や技術パートナーと密に連携しながら、製品の調達・検証・供給を行っています。トラブルの根本原因に対する直接的な分析には制約がある反面、現場を横断して得られる情報やフィードバックの蓄積によって、多面的な視点から製品の動向や違和感を捉えることが可能です。各現場から寄せられる気付きや使用状況の違いを踏まえ、変化の兆しを総合的に見極める体制づくりに取り組んでいます。
 
これにより、個々のメーカーや顧客だけでは気付くことのできない、小さな「違和感」や「異変」を比較的早い段階で察知しやすいと感じています。多様な協力先との継続的な連携を通じて、小さな変化にも気付きやすくなっていることに加え、それを社内外に橋渡しできる点に価値があると捉えています。
 

仕様変更に気付くきっかけとなった事例

サイレントチェンジは一見わずかな変化として現れることもありますが、見過ごされることで予期せぬトラブルに発展する可能性があります。ここでは、社内外からのちょっとした気付きが、結果として仕様変更の発見につながった実例を取り上げます。
 
「同じ型番なのに通電直後のLEDの明るさがやや異なる気がする」という社内からの報告をきっかけに、確認を行ったところ、直列に接続されていた抵抗の仕様が変更されていたことが判明しました。抵抗値の違いによりLEDに流れる電流が微妙に変化し、それが照度の印象差として現れたものと考えられます。電気特性には問題なく、製品仕様の範囲内でしたが、こうした変更が検査工程での主観的な印象の差異や、外観基準とのすり合わせに影響を及ぼす可能性があるため、注意が必要です。この抵抗の仕様変更は、部材調達上の事情によるものと見られますが、通知がなかったため、事前に把握することができませんでした。
 

 
 

変化を見逃さない情報管理の工夫

仕様変更は突然発生することもありますが、さまざまな兆候や前触れを伴うことも少なくありません。弊社では、こうした変化の兆しを見逃さないよう日々の業務の中で小さな変化にも目を配り、情報を記録・蓄積・活用するための取り組みを続けています。以下は、その具体的な工夫の一部です。
 

  • 新しいロットが納品された際には、製品の外観写真を記録し、過去の写真と照らし合わせて、外観やラベル表示など、納入仕様書上で重要とされる項目に変化がないかを確認するようにしています。まだ試行錯誤の段階ではありますが、色味や質感などの細部についても、気付いた範囲で記録を残すことで、変化の兆しをできる限り見逃さないよう意識して取り組んでいます。
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  • 情報の記録と再活用の仕組み。
    製品に関するちょっとした気付きは、担当者が各自のメモに記録し、必要に応じて共有フォルダに保管しています。たとえば「いつもと色味が違う」「印字がかすれている」「梱包が違う気がする」といった、小さな違和感も含めて蓄積しておくことで、後から振り返って変化の兆しを捉える材料になることもあります。これらの記録で類似の報告が重なる場合には品質チームで重点的に確認を行うようにしています。完璧な仕組みとは言えませんが、こうした日々の小さな記録の積み重ねが、問題の予兆を捉えるきっかけになると考えています。
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  • 海外の協力会社に対し、仕様変更通知の契約義務化。
    情報取得や変更の事前把握を目指して、協力会社との対話を継続的に行っていますが、実際には各社で対応の温度差があるのも現実です。そのため、より確実な関係構築に努めています。商慣習や言語の違いによる情報ギャップを防ぐため、取引契約に「軽微な変更を含めた事前通知」を盛り込むよう努めています。ただし、協力会社ごとに対応のバラつきがあるため、文書確認や納品物の自主点検などの自助的な対応も併用しています。
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  • 海外メーカーの製品カタログやテクニカルノートの確認。
    日々の業務の中で文書全体を精読するのは難しいため、新しいロットが届いた際や、何か気になる点があった場合に、対象のカタログや仕様書の該当箇所だけをさっと見比べるようにしています。以前の内容と異なる記載が見つかった場合は、そのままにせず、気付いた人が社内チャットなどで共有し、必要に応じて確認・対応を行います。日々の業務の延長線でできる範囲から、小さな違和感に気付く習慣づけを心がけています。
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    完璧じゃないからこそ、意識して続ける


    ただし現実には、すべての協力会社が同じレベルで変更を通知してくれるわけではなく、対応にばらつきがあるのも事実です。だからこそ弊社では、個別の協力会社ごとの対応傾向を把握し、変更が通知されづらい相手に対しては、より入念な確認や情報収集を行うよう努めています。私たちのような立場に求められるのは、技術的な深掘りだけではなく、小さな「違和感」に敏感なアンテナを張り巡らせ、それを社内外に適切に伝えていく姿勢だと感じています。重要なのは、「お客様より先に気付く」こと。その先回りの意識と対応こそが、協力体制の中で信頼を築く鍵になると私たちは考えています。
     
    サイレントチェンジのリスクに適切に対応するためには、気付きやすい仕組みの構築や情報共有、協力会社との連携強化が不可欠です。弊社では、そうした取り組みを積み重ねることで、協力体制の中での信頼を育み、お客様に安心して選んでいただける存在であり続けたいと考えています。

    この記事を書いた人

    高田 悠以(たかだ ひろい)
    株式会社エスエムアイ 代表取締役
    愛知県生まれ。名古屋外国語大学卒業後、シアトル留学を経て株式会社エスエムアイに入社。
    医療用絶縁トランス、スイッチング電源、ACアダプター、DC-DCコンバーター等 電源製品の開発営業として勤務。日本のモノづくりを愛し、「お客様のお客様を満足させる事が真の顧客満足」をモットーに営業活動に従事。2018年に株式会社エスエムアイの代表取締役に就任。
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